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ドライエイジングとウェットエイジング、何が違う?熟成肉について知っておきたいこと

「熟成肉」と一口に言っても、方法は2つある

「熟成肉」という言葉はすっかり食卓になじみました。ですが、その熟成には「ドライエイジング(乾燥熟成)」と「ウェットエイジング(湿式熟成)」という2つの方法があり、仕上がりの風味も歩留まりも大きく変わることは、意外と知られていません。ここでは、米国の食肉業界団体(USMEF)がまとめた調査資料の数値も交えながら、2つの違いをわかりやすくお伝えします。


ウェットエイジング——実は、流通するお肉の多くがこの状態

ウェットエイジングは、肉を真空パックに入れたまま冷蔵で寝かせる方法です。空気を遮断するため水分(ドリップ)が逃げにくく、歩留まり(食べられる量の割合)が高いのが特長です。1980年代以降、出荷される牛肉の9割以上が真空包装で扱われるようになり、輸送や保管の期間そのものが熟成期間になります。

  • 肉自身の酵素がはたらき、たんぱく質が分解されて柔らかくなる
  • 水分が保たれるため、加熱後もジューシーさが残りやすい
  • 収縮やカットのロスがほとんど出ず、無駄が少ない

調査資料では、ウェットエイジングを21日間行ったリブやロインは収縮ロスがほぼなく、トリミング(変色・乾燥した部位の切り落とし)も0.55〜1.17%にとどまったと報告されています。経済的で扱いやすい、合理的な方法だといえます。


ドライエイジング——手間とロスが生む、特別な風味

一方ドライエイジングは、肉を真空パックに入れず、むき出しのまま専用の熟成庫で乾燥熟成させる方法です。調査資料では、目安として次のような条件が紹介されています。

  • 温度:約0〜4℃(多くの研究で2℃前後)。肉が凍る手前まで下げつつ、酵素のはたらきは保ちます
  • 湿度:相対湿度80%前後(おおむね75〜87%)。高すぎると腐敗し、低すぎると過度に乾燥します
  • 送風:ファンや穴あき棚で全面に均一に風を当て、ムラなく乾かしながら腐敗や不快臭を抑えます
  • 期間:一般に14〜35日(1〜5週間)

やわらかさの目安となる「せん断力(肉を切るときに必要な力)」は、14日目から35日目にかけて約17%下がるという報告があり、時間をかけるほど柔らかくなる傾向があります。ただし「14日を超えると風味の伸びは限定的」とする研究もあり、最適な期間には専門家の間でも幅があります。


あの「熟成香」はどこから来るのか——カビは必須ではない

ドライエイジング特有の熟成香やコクは、主に2つの理由で生まれます。ひとつは肉自身がもつ酵素のはたらきでうまみ成分が増えること。もうひとつは水分が抜けて風味が濃く凝縮されることです。調査資料でも、ドライエイジングのお肉は「バター風味でコクがある」「ナッツのような香ばしさ」と表現され、焼いたときの香ばしい(ロースト)風味が強まることが示されています。

「ドライエイジング=表面にカビ」というイメージを持たれがちですが、カビは必ずしも必要ではありません。USMEFの調査資料では、表面の微生物はむしろ「腐敗」の原因として、温度・湿度・送風、さらには紫外線ランプなどで増殖を抑えるべきものと位置づけられています。水分を通しやすい専用のパックを使って、カビをつけずに乾燥熟成させる方法もあります。仕上がりの香りや風味は、手法やお店によってさまざまです。


「おいしさ」と引きかえの、歩留まりの差

ドライエイジングは、その風味の代わりに大きなロスを伴います。調査資料によると、収縮ロス(水分が抜ける分)は14日で約3.3〜4.7%、21日で約4.5〜6.5%。さらに、固く乾いた表面(クラスト)を切り落とすトリミングロスが21日で約5〜6.5%加わります。トリミングが1%前後で済むウェットエイジングと比べると、最終的に食べられる量の差は小さくありません。この手間とロスの分が、ドライエイジングビーフの価格や希少さにつながっています。


牧場直営店 玉家から、お肉選びのひとこと

ウェットエイジングとドライエイジング、どちらが優れているということではありません。ジューシーさと食べやすさ、日常の使いやすさならウェット。凝縮したうまみと熟成香を楽しむ特別な一皿ならドライ、と、目的によって向き不向きがあります。

そして、温度・湿度・送風・衛生をこれだけ精密に管理する熟成は、家庭の冷蔵庫で再現するのは難しく、衛生面のリスクも伴います。熟成肉は、設備と技術を持つお店で選ぶのがいちばん安心です。牧場直営店 玉家では、ドライエイジングの取扱いは現在しておりませんが、神戸ビーフや但馬牛をはじめ、素材の持ち味を大切にしたお肉をご用意しています。「どんな料理に合う?」「どのくらいの熟成が好み?」など、気になることはお気軽にスタッフへお声がけください。


参考にした資料

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