国産牛肉の自給率が42%に、5年連続で上昇中。それでも「食料自給」の実態は複雑です。
「国産牛」という言葉に、安心感を覚える方は多いと思います。飼育場所が明らかで、流通経路がたどりやすく、生産者の顔が見えやすい。牧場直営店 玉家でも、お客様から「国産かどうか」を確認していただく機会が少なくありません。
農畜産業振興機構(ALIC)が公表した令和6年度の食料自給率データによると、牛肉の自給率(重量ベース)は42%となり、前年度比2ポイント上昇しました。しかも5年連続での上昇です。数字だけ見れば「国産牛の時代が来た」とも読めそうです。
ただ、この数字の背景を少し掘り下げると、「自給率42%」の意味合いが変わってきます。今回は食料自給率の仕組みとともに、「国産を選ぶこと」の意義をあらためて考えてみます。
牛肉の自給率42%とは何を意味するか
牛肉の自給率42%(重量ベース)とは、日本国内で消費される牛肉のうち、約4割が国内で生産されているということです。残りの約6割は、主にオーストラリア・アメリカなどから輸入されています。
5年前と比べると、この割合は着実に上がってきています。和牛の需要や、国内の肉用牛農家による生産努力が実を結んできた結果と言えます。「国産牛が増えている」という事実は、日本の畜産業が底力を発揮していることの表れです。
一方で、食料全体のカロリーベース自給率を見ると、令和6年度も38%にとどまっています(農林水産省発表)。つまり、私たちが口にする食料のカロリーの約6割以上を、海外に頼っている状態です。
「国産牛」を育てるエサは、どこから来ているか
ここで一つ、大切な事実があります。国内で牛を育てていても、その牛が食べるエサ(飼料)の多くは輸入に頼っているということです。
牛のエサの中心となるのは、とうもろこしや大豆かすといった穀物飼料です。これらは主にアメリカや南米から輸入されています。国内の牧草・稲わら等の粗飼料も使われますが、配合飼料の原料となる穀物の多くは海外産です。
こうした事情から、農水省は「飼料自給率を考慮した自給率」という指標も別途算出しています。重量ベースで42%の牛肉自給率も、飼料の輸入依存度を加味すると実態は異なる水準になります。「牛は国内にいる、でもエサは海外から」という構造が、自給率の数字に隠れているのです。
国産牛の生産量が増えても、飼料の調達先が安定しなければ、牧場経営は世界の穀物相場や為替に大きく左右されます。2022年前後に飼料価格が急騰した際、多くの畜産農家が厳しい経営判断を迫られたことは、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。
「国産を選ぶ意味」は、数字よりも深いところにある
では、消費者にとって「国産牛を選ぶ意味」はどこにあるのでしょうか。
自給率の数字は、食料政策や国の安全保障を議論する上で重要な指標です。ただ、一人のお客様が国産牛を選ぶ動機は、もっと身近なところにあると思います。
- 生産履歴がたどれる安心感:どの牧場で育ち、どのように流通してきたかが確認しやすい
- 品質基準の明確さ:神戸ビーフや但馬牛など、厳格な認定基準のある銘柄を選べる
- 地域の畜産業を支える:国産牛を買うことが、地元農家の経営を直接支えることにつながる
- 育ちが見えること:仕入れ元や肥育環境を直接確認できる
自給率が上がる時代に、産地と向き合う
牛肉自給率が5年連続で上昇しているというニュースは、日本の畜産業にとって明るい話題です。ただ、その数字の裏には飼料の輸入依存という構造的な課題があり、生産者は常にその両方と向き合いながら牛を育てています。
牧場直営店だからこそ、こうした複雑な生産事情を自分たちで把握した上で、お客様にお肉をお届けしたいという思っております。
自給率42%という数字の意味を知った上で、「この肉がどこから来たか」を一度たどってみてください。産地と生産者が見えている肉を選ぶ体験は、数字では表せない信頼につながります。
牧場直営店 玉家は、そういった「育ちが見える肉」を届け続けます。
まとめ
- 令和6年度の牛肉自給率(重量ベース)は42%で、前年度比2ポイント上昇し、5年連続の増加(農畜産業振興機構・ALIC発表)
- 日本全体のカロリーベース食料自給率は38%で、食料の半分以上を海外に依存している状態(農林水産省発表)
- 国産牛の生産量が増えても、飼料(とうもろこし等)の多くは輸入に頼っており、「飼料自給率を考慮した自給率」は重量ベースの数字より低くなる
- 「国産を選ぶ意味」は自給率の数字だけでなく、産地・育ち・流通経路が見えることにある
参考にした資料